戦後日本のテレビ文化において、昭和期の「おっぱい」表現は社会規範とメディアの攻防を象徴する存在でした。1953年のテレビ放送開始当初、家庭向け番組では厳しい自主規制が敷かれていましたが、高度経済成長期に入ると状況が変化します。
1960年代後半、『11PM』(日本テレビ)などの深夜番組が肉体美を強調する演出を導入。水着シーンや谷岡ヤスジの「おっぱい番長」キャラクターが話題を呼びました。当時は「3B(Beauty, Baby, Beast)理論」と呼ばれる視聴率確保の定石が形成され、女性の身体表現がエンタメの重要な要素として認知されます。
1970年代にはピンク映画出身の女優がバラエティ番組に進出し、『8時だョ!全員集合』(TBS)の水泳大会特集などで健康的な露出が定番化。1980年代のアイドル全盛期には「巨乳アイドル」というジャンルが成立し、CMや歌番組で特定の身体特徴が強調されるようになりました。
この変遷は、戦後日本の性意識の変化を反映すると同時に、テレビ局の商業主義と社会のモラルがせめぎ合う過程を示しています。現代の表現規制を考える上で、昭和テレビ史が投げかける問いは今日も有効と言えるでしょう。