**「愚行録」は2017年に公開された石川慶監督によるサスペンス映画**で、貫井徳郎の同名小説を原作としています。世間を震撼させた一家惨殺事件を軸に、人間の闇と社会的偽善を鋭く抉る物語が展開されます。
### 事件の核心:完璧家族の崩壊
郊外の高級住宅街で、エリート医師の妻と2人の子供が虐殺される衝撃的事件が発生。容疑者として浮上したのは、被害者夫妻の元同僚・田向浩樹(妻夫木聡)とその妹・田向智子(満島ひかり)の兄妹でした。
### 記者の調査が暴く「二重の真実」
社会部記者・田中武志(小出恵介)が事件を追う中で明らかになるのは、兄妹が語る「被害者家族の異常性」と、周囲が証言する「模範家庭像」の矛盾。PTA会長として完璧を装う母親の裏顔、子供への異常な教育方針が次々と暴かれます。
### 狂気のルーツ:兄妹のトラウマ
取材が深まるにつれ、田向兄妹自身の壮絶な過去が浮上します。父親からの虐待、母親の無関心、そして兄妹だけが共有する「暗闇の記憶」。彼らの異常行動は、崩壊した家庭環境が生み出した必然だったのか?
### 衝撃のラストシーン
真実が明らかになる終盤、記者・田中が握る決定的な証拠と、兄妹が語る「もう一つの物語」が交錯。観客は最後の瞬間まで真実を見極められないまま、人間の愚行の本質を突きつけられます。
本作は「正義とは何か」「家族の闇とは何か」を問いかける社会派サスペンス。キャストの圧倒的な演技力と、ねじれた人間関係を描く脚本が、第41回日本アカデミー賞最優秀作品賞など数々の栄誉に輝きました。事件の表と裏を行き来する構成が、観る者に深い戦慄と考察を残す傑作です。