「紫色マスク」が近年、日本で静かなブームを巻き起こしています。伝統的に紫色が持つ「高貴」「神秘」「芸術性」のイメージと、現代の衛生需要が見事に融合したアイテムとして、ファッション業界から健康意識の高い層まで幅広い支持を集めています。
アパレルブランド「ヴェールド」の2023年秋コレクションでは、シルク製の紫グラデーションマスクがランウェイを賑わせました。デザイナーによると「マスクが単なる防護具ではなく、自己表現のツールへ進化している」とのコンセプトが込められています。紫外線カット機能と通気性を両立させた特殊素材が、実用性と美的感覚を兼ね備えています。
医療分野でも注目される動きが。京都大学医学部附属病院の研究チームは、心理的安心感を与える色調として紫色を採用した医療用マスクを開発中です。術後患者へのテストでは、従来の青系マスクに比べ「落ち着きを感じる」との回答が37%増加したとのデータが得られています。
アート界では「マスクアート」の新たなキャンバスとして活用されるケースも。金沢市で開催された現代アート展では、地元作家による紫染め和紙マスクのインスタレーションが話題を呼びました。伝統工芸と現代的な衛生概念の融合が評価され、文化庁の現代芸術促進プログラムに採択されています。
「色が心に与える影響を再認識するきっかけになった」と語るのは色彩心理学者の山本涼子教授。紫色が持つα波誘発効果と、マスク着用時の心理的抵抗感緩和の相乗効果について、今後さらなる研究が進む見込みです。